龍神のモリヤさんと嫁(生贄)の私

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 山の麓に広がった平らな地形の私の村では、稲作を中心に生活をしていた。  しかし、近くを流れる恵比寿川の上流で土砂崩れでもあったのか、ある時から川の水量が減って村まで行き届かなくなってしまった。地下の水脈を探して井戸を作り、これまでなんとか生活してきたが、雨が何日も降らなくなるとたちまち水不足に陥った。田畑が枯れ、取れる野菜は皆どれも細く、栄養が不足し、疫病も流行した。    美しい娘を人身御供にして龍神に捧げれば恵みの雨が降るという伝説が生まれたのは、村で最初の飢饉(ききん)があった年だった。  村の北にある山を分入って最奥までいくと神秘の滝壺が現れる。そこに棲むと言われている龍の神に祈りを捧げながら滝壺に美しい娘が飛び込んだところ、何故か長雨が降り、村が救われたのだという。  それからというもの、(ひでり)が起きるたびに娘を龍神に捧げるのがこの村の習わしとなった。  しかも、ただの娘では効果がなく、とびきり美しい娘でなければいけないらしい。 「お主にしかできないことなのだ」    今年の旱魃(かんばつ)は特に酷かった。あと数日のうちに雨が降らなければ、村民の命に関わると噂されていた。  そこで私に白羽の矢が立った。 「はい、分かりました。死ねばいいんですね、はーい」  こんなことなら、好きな男を作って駆け落ちでもしておけば良かった。  でも、この村の男ってレベル低くて私の美しさに釣り合わないのよね。  しくったわ。
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