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冷凍人間
「長生きしたいです、死にたくないです」
33歳になった私は余命宣告をされた。まだ死にたくない、生きてもっと色んなことがしたいと思った私は、ダメ元で都市伝説を頼りに人一人入れる冷凍庫を作った。都市伝説によるとその作った冷凍庫の中に入り長生きしたいことを言うと願いが叶うという。
私は3回同じことを言った。しかし何も起こらない。やはり都市伝説は都市伝説かと思い冷凍庫から出ようとしたが開かなくなっていた。
「そんなに長生きしたいのか?」
どこからともなく高い声でそう聞こえてきた。どこから聞こえるんだとあたりを見回すとここだここだ、下だよ足元と言われたので下を見る。
そこには10センチくらいの小さな女の人がいた。
「うわぁーーー!!」
驚きのあまり情けない声が出た。目を見開きもう一度よく見る。それは人間をそのまま小さくした、いわゆる小人だ。小人女だ。
「そんなに見つめないでよ」
「いや、見つめてはない」
調子づいた女に冷静に返す。それにしても幻でも見ているのだろうか。冷凍庫を出ようとしたがやはり開かない、そして小人女は存在している。
「願い事言ったから取引するまでは出れないよ。で、長生きしたいんだね、あんた」
「はい……」
取引という言葉が気になったが答えると小人女の背中にいきなり半透明の翼が生える。その翼で飛び私の目の前にきて言った。
「どうだ取引するか?」
「はい」
長生きできるならと私は二つ返事で返事をした。
「じゃあ取引成立だ。お前はむ死ぬことはない」
いきなり言われた非現実的なことに間抜け顔になっていると小人は続けて言う。
「疑うなら試してみろ。車に惹かれようと火に焼かれようと電車に飛び込もうとお前が死ぬことはない。あ、そうそう。代わりにお前の存在をいただくぞ」
「存在?」
「そのうち分かるさ。じゃ、人生謳歌しろよ」
小人女はそう言うとこつぜんと姿を消した。そして触ってもいないのに冷凍庫の扉が開き何かに押されるように私は外に出ていた。
それから私は体だけの関係を持っていた女に恨まれ包丁で刺され意識を失った。気がついたら病院のベッドの上で近くにいた医者が驚きの声を上げた。
「奇跡だ! 心臓を一突きで普通は助からないはずなのに……!」
刺されたときの痛みは今でも覚えている。奇跡的に助かったと言うがもしかしてあの小人女と取引したからか、確かお前が死ぬことはないと言っていた。
病院でしばらく安静している間、余命を告げられていた原因の病気もなくなっていることを言われ、医者は奇跡という言葉を連発していた。
その後、記者に取材され私は『奇跡の男! 刺されても死なない上に癌も消え健康そのものに!』と大々的に取り上げられsnsでも拡散され一躍有名人となった。
ときは経ち84歳になった。歳はとったが見た目は30代の頃と変わらず、これも取引のおかげだろうかと嬉しくなった。去年にはまたしても取材をされ一躍有名人となった。
しかし誕生日が過ぎてからは嘘みたいに話題にすらされなくなり誰それ?と言われるようになってしまった。
まぁいいだろうと思い私はこの歳でも全然頭も体も元気で働けるので、いつも通り仕事をしようとパソコンを立ち上げる。
社員IDを打ち込んで始めようとしたらエラーになってしまった。何度やってもエラーになりどうしようもないので会社に電話をした。
「あなた誰ですか? うちにそんな名前の社員もIDの社員もいませんよ」
そんなまさかと思い何度も所属課や名前などを言うが存在しないと言われてしまった。取引のときの存在ってまさかこういうことかと思っているといきなり部屋に入ってきた自分の息子が驚いたことを言われた。
「え……、誰ですか?」
「いやいやいや、お前のお父さんだよ。何言ってるんだ」
「いやいやいや、僕にお父さんなんていませんよ」
「んなわけあるか! じゃあお前はどこから生まれてきたんだ!?」
すると息子は人口的に作られたと言う。
小人女は喜んでいた。
「よしよし。これであたしの存在が完成っと!」
小人女は通常の人間サイズになり冷凍庫から一歩踏み出す。
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