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ディスティニア・ラストループ ー集う者達よ、ただ一人の少女を救えー
一人の男がいた。
その男は愛する少女を助けたかった。
だが、少女は助ける事が出来ない。
世界が少女の生存を許さなかったからだ。
世界が、「自分を救いたくば少女の命を諦めろ」と言ったからだ。
一人の男は諦めた。
一人の少年がいた。
その少年は友の少女を救いたかった。
けれど、少女は助ける事が出来ない。
運命が少女の幸福を許さなかったからだ。
運命が、「多くの者達に幸せをもたらしたくば、その一つの幸福は諦めろ」と言ったからだ。
一人の少年は涙した。
一人の鳥がいた。
その鳥は恩人の少女を救いたかった。
けれど少女は助ける事ができない。
真実が少女の願いを許さなかったからだ。
真実が「お前が穢れないために、その少女の純心を諦めろ」と言ったからだ。
一人の鳥は、憤った。
そして少女は、神になった。
人であることをやめ、人としての生を、幸福を、願いを持つ事をやめ。
多くの失敗が彼女の体を苛み、呪いをかけてしまった。
神は呪われた女神ディスティニアとなり、多くの諦観と悲しみと憤りでできた羽をまとって、彼等の元から飛び去って行った。
そして、狂った女神ディスティニアは、どこかの世界へ降り立った。
女神ディスティニアが、その箱舟の世界に降り立ったとたん、ゲームは始まる。
事件がまきおこり、事故が多発し、災害が悲劇を誘う。
人々はすぐ、阿鼻叫喚の渦に巻き込まれた。
運命をつかさどる女神は、決して笑わない。
ただ嗤いながら、あくび交じりにサイコロを振るうだけ。
目撃者、加害者、被害者をくるくる入れ替えながら、舞台劇の台本を読み遊ぶだけ。
けれど、やられてばかりではいられない。
復讐者と反抗者と逆襲者が立ちふさがる。
かつて狂った女神の肩に手をかけられなかった、敗北者の肩書を身にまとう者達が。
その世界にたどり着き、追いつき、見つけ出して。
――ゴールは知れている。
「この惨劇に終止符を」
――目的は分かっている。
「女神に本当の微笑みを」
――ハッピーエンドを目指すには。
「全ての駒が生き残る必要がある」
――そのための鍵は箱庭にあり。
「魂を癒せ、そして奮い立たせろ」
『全ては、誰かが泣かねばならないこの運命に立ち向かうため』
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