世界から消される日

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 私には時々、世界から隔離されてるんじゃないかと思う時がある。  これだけネットが普及されている世の中、メッセージを送っても返ってこない、いつもならレスがつく掲示板でもレスがつかない。偶然だと思いたいがメッセージを遅れて返してきた人たちはみな口をそろえて忙しくて返せなかったと言う。  誰とも関わらない時間、寂しくて誰かに相手にされたくて普段はやらないようなアプリなどをやったりする。その中ですぐると出会った。  色んな人の画像やプロフィールを眺めていた。ものすごく加工を施してる人もいれば、全く加工をしない人。決めポーズで誰かに撮ってもらっているような人。プロフィールはどこまで信用していいのかわからないのであてにしない。  すぐるの写真は加工はなく、居酒屋で飲んで笑っている写真で年齢は二つ上。隣の県だが電車一本で行けるところだ。  すぐるには目標があるらしく、それを一緒に達成できる人を探すためアプリを始めたという。目標が何か聞いたが今はまだ秘密で親密になれたその時教えてくれるらしい。  何回かメッセージを重ねデートすることになった。場所は居酒屋。待ち合わせ場所に行くと、現れたのは写真通りの普通の人だ。少し赤みがかった髪にカジュアルスタイル。対する私は白のブラウスに紺のワイドパンツだ。  お互い服の特徴を伝えたらすぐに分かった。待ち合わせの時点でスムーズにいかない人とは、その後も上手くいかないことが多い。今回は大丈夫そうだと感じる。 「初めまして~。すぐるさんです、よね?」  当たっている自信はあるが一応確認をとる。すぐるは柔らかな笑顔でそうですよと答えた。適度な距離を取りつつ予約した店へと向かう。 「町屋さんはああいったアプリで会ったことってあるんですか?」  すぐるのしゃべり方は穏やかさを感じさせ、こういう初対面の人相手だと緊張し声が上ずったりするが、お落ち着いて話すことができた。アプリで会ったことあるのは二、三人にいたことを言う。すぐるもそのぐらいと返した。  居酒屋に入り席に着く。向かい合ったとき自然と二人とも笑顔になった。財布の中身のことを考えながらメニューとにらめっこ。とりあえず最初の一杯を頼もうとなり、お酒が得意でない私はカクテルを頼んだ。  グラスを交わすと風流なガラスの音が立つ。再度メニューを眺め焼き鳥、だし巻き卵、枝豆、冷製サラダを注文。手を合わせいただきますといい料理に箸をつける。そんな私を見てからすぐるもいただきますといい箸をつけた。  話はアプリの話から仕事の話、恋愛の話と展開していった。今の職場では既婚者だったり、独身でも彼女がいたり、あるいは私のようにどこに棘があるかわからない絡みづらい人間だったり。  だからか全く誰からも相手にされない日があると話すとすぐるはお酒を少し口に含んでから言う。 「俺もあるよどういう時。質問系で返しても返ってこなかったり。ってかため口で話さない?」  私が歳上だからと言うと、いいよそんなこと気にしなくてかしこまった場所とかじゃないんだしと言った。あまりでもでも言うとよくないと思い、遠慮を捨てため口で話すことにした。  初対面の人にため口で話すのは好きではないが、すぐるに対しては嫌な感じがしなく話しやすかった。それはおそらくすぐるの物腰の柔らかそうな感じがそうさせるのだろう。敬語よりは距離がぐっと縮まる気がする。  出された料理を食べながら話は盛り上がり私とすぐるは付き合うことになった。呼び方もすぐるさんからすぐるへと変わる。すぐるも町屋さんからあゆみになった。
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