ショートショート【再会】

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でもミサトは人目を憚らなかった。唖然とする僕の前で自分の財布からコーヒーの代金を取り出し机に置く。止めようとする僕を無視し、彼女は席を立つ。 「……ごめん!」 乱暴に歩くミサトに、せめて、と思って声を絞り出す。 「もういいよ」 ミサトは僕に背を向けたまま諦めたように言った。自分が注目を浴びていることに初めて気づいたのかひどく弱々しい声だった。 「何度ハルトのこと忘れようとしたか分からない。それなのに……なんで私の前に現れたりするの?なんで好きなんて言うの?……そんなことするから、忘れられなくなるじゃない……!」 ミサトは走り出す。僕は追う。でも、間に合わなかった。 待って、と言いかけた僕の前で、自動ドアが閉まる。それは閉じたまま動かなかった。 気がつけば雨は止んでいた。                                                                  
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