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フォークでドーナツを3つに切って口に運ぶ。
しっかりシナモンの風味と柔らかいリンゴが甘酸っぱくておいしい。
「お、おいしい~っ」
感激の声を漏らすと拓海が「だろ?」とドヤ顔をする。
「コーヒーもドーナツも拓海のいうように本当においしいね!」
「マキナ、小学生の頃からガサツだったけど、ドーナツとかケーキ作るのは上手くて。よく毒見させられた」
拓海の言い草に私は苦笑した。
「素直じゃないなぁ。味見の間違いでしょ。きれいで性格も格好良くて、特技もあって……。マキナさんって完璧だね。羨ましいな」
「みのりも料理得意じゃん。どれも美味いし」
「私のは……ただの趣味だもん。趣味の域を出ない。マキナさんみたいにお店を出して経営したり拓海達みたいにプロとして色んな人に音楽を届けたり……。そういう『才能』がないんだよね。だから、すごいと思う。みんなの事」
拓海がクリームチーズのドーナツを半分に切ってかぶりつく。
そのまま考える様に目を伏せると、「才能、か」と呟いた。
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