song10

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じっと拓海を見ていた雪が不思議そうに言う。 その視線を断ち切る様に拓海は私達にくるりと背中を向けた。 「……俺、明後日の準備してくる」 そう宣言して2、3歩進みかけた拓海が、不意に足を止める。 「どうかした?」 「メッセージ」 「うん?」 「俺も送るから」 それだけ言うと拓海は足早に部屋へ行ってしまった。 「どうしたんだろ、拓海」 ミネラルウォーターと炭酸水のストックを冷蔵庫に入れる作業を手伝ってくれながら、雪が視線を私にとめた。 「あれ、みのりも顔赤い。もしかして2人とも、風邪?」 「ち、違うの。ちょっと暑くなっちゃって」 パタパタ両手で火照った顔を冷ましながら、雪に笑顔を返す。 雪は私がいなくて寂しいと言ってくれるけど、私だってみんながいないとすごく寂しい。 拓海や雪と違って胸の内を言えないまま1日が終わる。 そして、『明後日』は飛ぶようにやって来た。
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