170人が本棚に入れています
本棚に追加
「えー。それじゃ俺達がめちゃくちゃわがままみたい」
「めちゃくちゃわがままでしょ。自覚しようね」
白橋さんが腕時計を見た。
「名残惜しいけど、そろそろ出よう。じゃあ、みのりちゃん、気を付けて学校に行ってね。無理して4品作らなくていいし、のんびり自由を満喫して」
「俺グラタン食べたい」
「僕チーズハンバーグ」
「チキン南蛮がいい」
「エビチリ」
「……もう、連れてくね」
白橋さんに急き立てられて4人がドアの向こうへ出ていく。
手を振ってみんなを見送る最中、
「あ! 忘れ物」
小さく叫んだのは雪だった。
「忘れ物? 取ってこようか?」
「ううん。みのりに対して忘れ物」
家の中へ足を向けかけた私を雪が止める。
「私?」
にこっと口角をあげて雪が両腕を広げた。
視界が雪で満たされる。
「行ってくるね、みのり! 頑張るから応援してて」
背中に回された手にぎゅっと力が加わって、反射的に私は雪を抱きしめ返した。
「うん! 応援してるね。楽しんできて」
雪は満足げに「充電完了!」と歌うように言うと、私から身を離す。
最初のコメントを投稿しよう!