song11

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それからけろっとした顔で、みんなを見回した。 「どうしたの、みんな。ぽかんとして。そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」 玲音が隣に立つ拓海にちらりと視線を馳せた。 「拓海」 「……なんだよ」 「すごく凶悪な顔になってるよ」 「うるせー」 「いつも思うんだけどさ、雪って役得だよね」 憮然としたままの拓海に玲音が苦笑する。 雪はご機嫌で、夏希くんは通常運転だ。 「応援してくれるみのりちゃんのためにも、ファンライブ、力を合わせて成功させよう!」 取りなす様に白橋さんが声をかけて、ぞろぞろみんなが歩き出す。 「行ってきます!」 「行ってくるね」 「行ってくるわ」 それぞれに笑顔を返していたら、何か言いたげな夏希くんと目が合った。 「夏希くん?」 「……行ってくる」 夏希くん以外のメンバーがその背中を叩く。 少し迷惑そうな夏希くんの様子がおかしくて、口元が緩んでしまう。 同時にお腹の底がじんわり温かくなって、みんなの姿が見えなくなるまで私はそこに立っていた。
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