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「出て行った? どこに? スーパー?」
「カナダ」
3文字。
夏希くんはよく私の事をからかうから、今回もそうだと思った。
「ちなみに恵美おばさんは来ないよ。みのりの居候の話、断っといたから」
「……はい?」
「その白い箱の中身を渡すべき大事なお客さんとやらは俺の事。みのり、まんまと母さんに騙されたな」
「ま、待って。意味が分からない。居候の話断った? お母さんはカナダ? え、嘘でしょ。嘘だよね?」
「周り、よく見てみれば。段ボールの数、微妙に減ってない?」
私は部屋の右側を見た。それから左側を。
「……減ってる、かも?」
「あいかわらずぼんやりしてんな、みのりは。そんなんだから簡単に騙されんだよ」
「段ボールが減ってるのは少しずつお母さんがカナダにいるお父さんの所に荷物を送ってたからで……。あれ?」
「みのりにバレないように少しずつ自分の荷物も送ってたんだろ」
「……」
夜逃げならぬ昼逃げまがいの事をされて、私はあっけにとられた。
「そ、それじゃ私どうなっちゃうの? このマンション、来週には出て行かないといけないのに……!」
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