プロローグ

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「迎え?」 「そう」 「誰を? 誰が?」 「俺が。みのりを」 つけっぱなしのテレビから、最近話題のスポーツドリンクのCMが流れる。画面いっぱいに広がる青空に、疾走感のある楽曲がぴったり合っていて、私の通う高校でも、クラスメイト達がよく口ずさんでいる。 伸びのあるしなやかな声。ポップさを加えるキーボード。楽曲を支えるドラム。そしてー……。 『弾ける夏! 僕らはきっと忘れない』 息ぴったりの声。 あえて顔は見せない。4人の走り出すシルエット。 耳に残る、巧みなギターのサウンド。 「みのり、お前、俺と……。いや、俺達と住むことになったから」 耳を疑うとはこの事だ。 この爽やかで心地いいCMソングを作った指が、私の髪をくしゃりと搔きまわした。
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