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小学生の時からバレンタインデーはチョコをえぐいくらいもらっていたし、彼女らしい存在にも事欠かなかった筈だ。
そのおかげで告白の取り次ぎ役を私は何度も頼まれて、本当に苦労した。
同じお母さんのお腹で一緒に過ごした双子だというのに、私はと言えば中の中。平凡の中の平凡を極めた顔をしていて、どこにでもいる顔、平たく言えば印象が薄い。夏希くんは一発で顔も名前も憶えてもらいやすいのに、私の方は『えーと……何さん、だっけ?』と聞かれる事多々。
大人しく、目立つのが苦手な性格も災いして今の高校でも影はかなり薄い方だと思う。
それでも。
夏希くんと離れて、地味だけどようやく手に入れた平穏な日常。
そう簡単に手放すわけにはいかない。
ジト目で見ると、夏希くんは手の甲をひらひらさせて、私に命令した。
「とりあえず、最低限の荷物だけ持って行くぞ。白橋さん待ってるし」
「最低限の荷物? 夏希くんの?」
「お前のだよ。あのな、みのり。俺は結構忙しいの。そんなボケかましてないでさっさと自分の部屋にあるボストンバッグ持って来い」
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