ライラック

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カランコロン 「ありがとうございました」 お店から二人の女性が出てきた。 彼女達は傘をさしながら、 「私、ライラックのハーブティーを 買っちゃったわ。・・・ねえ、このお店のひと猫好きだよね? いたるところ、猫グッズだらけ。」 「うん、かわいいよね。ティーセット、テーブル、メニューまで。 果歩は、こういうところで、素敵なひととお茶したいんでしょ。」 「もう!からかわないでよ。それでね・・・」 二人の女性は私が歩いてきた方向へ 楽しそうにおしゃべりしながら行ってしまった。 ああ楽しそう。 ・・・ふと傘を見ると傘の黒猫が ハーブのお店の方へ向いている。 お店のウィンドウを見ると、 ミントのハーブティーがあって、 『爽やかな癒し』 と、ミントの葉のイラストを添えた 黒猫のポップが貼ってあった。 私はくすりと笑った。 そして傘の黒猫をつついて (優しい黒猫さん、ありがとう。なぐさめてくれて。 近いうちにミントティーを買いにこようかな。 今日はお店に入らないけれど。 だって、涙でみっともない顔を店員さんに 見られたくないもの) 私はお店の名前を確認した。『ハーブティーにゃん』という店だった。 今日は泣く日。 しとしとと雨が降っているから。 心ゆくまで泣くの。 Fin.
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