目の覚めるようにつややかな青

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 先がフォークのようになった道具を地面に突き刺して、ぐいと持ち上げる。  ぐずりとほぐれた土の上にどっしりとそびえたつ雑草の根本を、空いた左手でしっかりと掴み、ぐりぐりと揺すって引き抜く。  グロテスクに手を広げた土まみれの根っこをしげしげと眺め、馬鹿みたいだ、と思う。  父が倒れ、入院したというのに、僕は実家の庭へやってきて、一心不乱に草むしりをしている。  父のそばについているであるとか、母のフォローであるとか、もしもの時に備えて各所への連絡をしておくであるとか、実家に戻るにしてもせめて、父の着替えを整えておくであるとか、やるべきことはいくらでもあるはずなのに。  初夏の日差しがじりじりとのしかかり、蝉時雨が耳に痛い。  キャップをかぶりなおして、真っ青な空と真っ白な雲を見上げる。  本当に馬鹿みたいだ、と思う。  まとわりつく汗を拭い、握りしめていた大物をゴミ袋に放り投げると、あっという間に量を減らしたペットボトルの水をもう一口含んだ。
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