2.信じてたのに

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 そのグラスに華奢な左手が伸びたのを見て、無意識に律顕(りつあき)から死角になる場所へ身を潜めた美千花(みちか)だったけれど。  その人の薬指には、美千花や律顕同様きらりと輝く指輪がはまっていた。 (既婚者?)  電柱の影に隠れるようにしてそっと覗き見れば、その手の主はミディアムロングの黒髪を後ろでポニーテールに束ねた女性で。  さっき蝶子(ちょうこ)との会話でも話題になった人物――。 「西園先輩……?」  だった。  思わず目にした相手の名前を口走ってから、美千花はキュウッと胸の奥が痛む。  律顕が自分以外の女性に柔らかな笑みを向けているのが、凄く嫌だと思ってしまったから。  ああして座っていると、ホワンとした印象の美千花なんかよりよっぽど。凛とした美人の稀更(きさら)の方が、クールな顔立ちの律顕とお似合いに見えて。  律顕と付き合い始める前。  美千花に「僕の彼女になって欲しい」と告白をしてきた律顕に「永田さんは同期の西園さんと恋仲なんじゃないんですか?」と聞いてみたことがあるのを思い出した美千花だ。
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