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そのグラスに華奢な左手が伸びたのを見て、無意識に律顕から死角になる場所へ身を潜めた美千花だったけれど。
その人の薬指には、美千花や律顕同様きらりと輝く指輪がはまっていた。
(既婚者?)
電柱の影に隠れるようにしてそっと覗き見れば、その手の主はミディアムロングの黒髪を後ろでポニーテールに束ねた女性で。
さっき蝶子との会話でも話題になった人物――。
「西園先輩……?」
だった。
思わず目にした相手の名前を口走ってから、美千花はキュウッと胸の奥が痛む。
律顕が自分以外の女性に柔らかな笑みを向けているのが、凄く嫌だと思ってしまったから。
ああして座っていると、ホワンとした印象の美千花なんかよりよっぽど。凛とした美人の稀更の方が、クールな顔立ちの律顕とお似合いに見えて。
律顕と付き合い始める前。
美千花に「僕の彼女になって欲しい」と告白をしてきた律顕に「永田さんは同期の西園さんと恋仲なんじゃないんですか?」と聞いてみたことがあるのを思い出した美千花だ。
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