2.信じてたのに

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 彼は即座に「有り得ない」と否定してくれたけれど、社内ではもっぱら「出来ているに違いない」と噂の絶えなかった二人なのだ。  さっき蝶子(ちょうこ)がわざわざ彼女の復帰を(ほの)めかしたのだって、きっと。それがあったから、気を付けなさいよ?と言いたかったのだろう。  美千花(みちか)は現状つわりのせいで律顕(りつあき)に近付かれることに、自分ではどうしようもない程に強い嫌悪感を覚えてしまうのだけれど。  だからと言って律顕への愛情が尽きたわけではなかったのだと、たった今締め付けられるような胸の痛みとともに実感させられた。 (何で課の違う二人が一緒にいるの?)  営業同士というのならまだ分かる。  だけど美千花の知る限り、財務と営業が外に一緒に出る用なんてないはずなのだ。  大概のことは社内で済むはずなのに。二人きりで何してるの?  もちろん同期なのだから全く話さないということはないと思う。  でも。 (律顕(りつあき)、私にプロポーズしてくれたときに約束してくれたよね? 私を不安にさせるようなことは絶対にしないって)  なのに。  何故?と問い(ただ)したいのに、美千花は喫茶店に乗り込んで行って、律顕に「これは一体どういうことなの?」と聞く勇気が出せなかった。  自分の、律顕への態度が酷かったというのも嫌と言うほど自認しているから。  だからだろうか。  二人に目撃されることも怖いと思ってしまったのは。  結局その日、美千花は『やおまさ』にも寄れないままトボトボと帰宅した――。
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