3.お願い、話を聞いて?

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 美千花(みちか)律顕(りつあき)に歩み寄ろうとしたときには、すでに遅すぎたのだろうか。 「あの、律顕……」 「ごめん、美千花。今日はちょっと忙しいんだ。またにしてもらえるかな?」  何とか律顕と話をする機会を作ろうと試みる美千花だったけれど、そのたびに(てい)のいい言い訳をされてはかわされてしまう。  そんなことが、もう十回以上は続いただろうか。  こうも続くと、さすがに美千花も律顕に避けられていると思わざるを得ない。  そんな中、せめてもの救いは律顕がどんなに遅くなっても、必ず美千花の待つ家に帰って来てくれることだったのだけれど。  美千花が彼の帰りを起きて待っていると、律顕は明白(あからさま)に困った顔をするのだ。 「ねぇ美千花。僕のことは気にせずゆっくり休んで? お願いだから」  いつか自分が律顕に告げた、「私のことは気にせず食べて来て?」という言葉を彷彿とさせられる気遣いをされて。  挙句「キミは今一人の身体じゃないんだから」と付け加えられては従うしかないではないか。
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