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梅雨入り前の今ぐらいの時期が旬の果物と言えば、枇杷やブルーベリー辺り。
結婚前によく利用していた手作りジャムの専門店『陽だまりジャム』が、ちょっと行った先にあるのを思い出した美千花は、寄ってみようかなと思い至る。
ヤマボウシの実で作られたジャムも、そこで買ったものだ。
(少し遅れちゃったけど、もしかしたら野いちごのジャムがまだあるかも)
市販のいちごで作ったジャムより粒々と酸味が多めの野趣溢れる野いちごジャムは、美千花のお気に入りのひとつだった。
とにかく何かを口にしなければ、と思った美千花だ。
家にある炭酸水にジャムを落とし込んで飲むのもありかも知れない。
美千花は独身時代シャンパンにジャムを入れて飲んだり、温かな紅茶に入れてロシアンティーにして飲むのも好きだったから。
動悸と息切れが少しずつ落ち着いてきた美千花は、手指に込めていた力を少し抜いた。
――と、そこで鞄に入れていたスマートフォンのバイブが響き始めて、律顕かも知れないと思っていそいそと取り出してみる。
「蝶子……?」
だが、画面に表示された相手が友人だと知って、小さく落胆の吐息を落としてしまった。
(ごめんね、蝶子)
時刻を見れば正午を回ったところで、恐らく昼休みを利用して電話をくれているんだろう。
美千花は急いで通話ボタンをタップした。
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