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「ぁ……」
〝赤ちゃんは無事?〟
そう聞きたいのに、微かに出せた声はたった一音。
喉の奥が張り付いたみたいに声が出せない事実に、これほど焦りを感じるなんて思いもしなかった。
「安心して? 子供は無事だから」
でも、美千花の様子から何を言いたかったのか、律顕が察してくれて。
そう告げられたことに肩の力を抜いた美千花だ。
(律顕が居てくれて良かった)
心の底からそう思ったのに。
「僕、ちょっと病院の人呼んで来るから。美千花は安静にしてて?」
そんなの、美千花の枕元にあるナースコールを押せば済むだけなのに、律顕がまるでこの場にいるのが居た堪れないみたいにそう言って席を立つ。
声も動きもままならない美千花は、引き留めたいのに彼を見上げるくらいしか出来なくて、行かないで!と言う本音が夫に伝えられなかった。
そもそも口を開いた所で、声を出せたかどうかも怪しかったのだけれども――。
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