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伊藤医師からの診察を受けた美千花は、ここがいつも妊婦健診で通っている総合病院の婦人科・産科の入院病棟だと理解して。
道端で倒れた上、全く固形物を受け付けられなくなっていたのが主治医にバレた美千花は、しばらくの間入院することを余儀なくされた。
目覚めてすぐには出せなかった声も、掠れはするものの少しずつ出るようになってきて。手足も、まだ末端が少しピリピリと痺れてはいるけれど、意識回復直後のように全く動かせないわけではなくてホッとする。
「美千花。食事、ちゃんと摂れてなかったんだね」
律顕に曇った顔で言われて、責められているように感じた美千花は途切れ途切れ、小さな声で「ごめ、なさ、ぃ」と謝った。
だが家で食事をしなくなっていた律顕は、そのせいで美千花がちゃんと食べられていなかったことに気付けなかった自分に腹が立つと言って。
美千花の方は夫のその姿に、そのことを律顕に相談出来なかった自分を悔やんだ。
二人の赤ちゃんにも関わる問題なのに、どうして自分は律顕ともっとしっかり向き合おうとしなかったんだろう、と思って。
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