4.律顕の嘘

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「本当のことを言ったら、きっと美千花(みちか)は僕を受け入れられない」  ややしてポツンと付け足された言葉に、美千花は泣きそうになって。 「ど、ういう、意味?」  ギュッと唇を噛み締めたら、口中に鉄臭い血の味が広がって一気に気持ち悪くなった。  急に真っ青になった美千花に、律顕(りつあき)が慌てて看護師を呼びに行って。  美千花は涙目でそんな夫を見遣りながら、(ナースコールで呼んでよ、律顕。お願いだから私から逃げないで?)と思った。 ***  夕方――。 「一旦入院に必要なものとか取りに帰って来るね」  そう律顕が声を掛けてきた時、美千花(みちか)はぼんやりと彼を見詰めることしか出来なかった。  何を恐れているのか分からないけれど、本音を語ってくれない律顕に、これ以上、自分は何を求めたらいいのだろう? (律顕。何を隠しているの?)  キュウッと胃の辺りが差し込むように痛んで、美千花は眉根を寄せて痛みに耐えた。  美千花に向けられる眼差しは昔のまま、愛情を帯びているようにしか思えないのに。  明らかに美千花に秘密を持っている律顕に、寂しさばかりが募る。
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