4.律顕の嘘

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***  しばし後、 「美千花(みちか)さんは私とご主人のこと、どう思ってるの?」  逆に問われて、美千花は言葉に詰まって。 「わ、私は。特に何とも」  ――思ってません。  本当は凄く凄く気になっている癖に、それを彼女の前で認めてしまったら負けな気がして。  美千花は一生懸命虚勢を張った。  なのに稀更(きさら)は、そんな気持ちなんてお見通しみたいに「嘘はダメ」と美千花の言葉を(さえぎ)るのだ。  そればかりか。 「だってほら、いつだったかな? 私がと喫茶店にいたの、貴女、見てたでしょう?」  パイプ椅子を引き寄せてそこに腰掛けた稀更が、美千花と視線の高さを合わせてじっと見つめてくるから。  美千花はキュウッと胃の辺りが差し込むのを感じた。  今の稀更は、律顕(りつあき)を〝律〟と呼ぶことを隠す気すらないらしい。  蝶子(ちょうこ)とランチしたあの日、商店街で彼らを偶然見かけてしまったことは、美千花の心の中だけに仕舞ったはずだった。  律顕にでさえ問えないままに今日まで来てしまったパンドラの箱。  それをいとも簡単にこじ開けて、稀更はその上で「本当に何とも思ってないの?」と再度問いかけてくる。
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