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さっき「一人で大丈夫」と拒絶したにも関わらず、結局診察室手前まで心配そうに付き添ってきた律顕に、今度こそピシャリと一線引くと、捨て犬みたいなとても悲しそうな顔をされてしまった。
十二週を過ぎれば経腹エコーに切り替わるらしいので、出来ればその辺りまでは大人しく待っていて欲しい。
もっと言うと、つわりが治まるまではなるべく近付かずに距離をあけていてくれたら。
こんなにも優しい旦那に対してそんなことを思うのは、新妻失格のワガママだろうか。
***
「心臓もしっかり動いてて順調だったよ。今、イチゴぐらいの大きさだって」
診察後、医師から渡された白黒のエコー写真を手渡したら、「すげぇーな! ちゃんと頭と胴体と手足が分かるようになってる!」と律顕が嬉しそうに瞳を細める。
「つわりがなかったら妊娠してるだなんて全然実感湧かないんだけど、ここにちゃんと居るんだよね」
お腹に触れながら言ったら、律顕がつられて手を伸ばしてきて。
それは父親としても夫としても当然の反応だったのに、美千花は彼に触れられることに物凄い嫌悪感を覚えて、思わず身体を引いて避けてしまった。
瞬間、律顕がとても悲しそうな顔をして――。
美千花は言いようのない罪悪感に包まれた。
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