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「……僕のにおいがダメになったんじゃないかって西園に言われて……。きみに嫌われたくない一心でにおいが届かないくらい離れなきゃって思ってしまったんだ。……本当は美千花自身に聞いてから判断すべきだったのに怖くてそれを怠った。だから……言いたいことを言い合えなかったのはきみだけの責任じゃない。いや、むしろ話す機会を潰しまくった僕の方が罪深いと思う」
律顕と話し合いたくて距離を詰めようとするたび、彼が不自然なくらい明白に自分から逃げていたのはそう言う経緯だったんだと今更のように気付いた美千花だ。
「あの、もしかして私がマスクして待ってた日も……」
「……配慮が足りなくてごめんね、美千花。あれって家でもマスクしなきゃいけないくらい僕のにおいがしんどくなってたってことだろ? それじゃなくても美千花は色々しんどそうなのに僕のせいで無理させて本当申し訳ないって思ってる。なのにどんなに外で時間を潰していても……どうしてもきみの顔を見に家に帰るのだけはやめられなかったんだ。――外で寝泊まりするとか……そんな配慮もしてあげられない中途半端な男でホントにごめん。きみが辛いなら、もっともっと風呂に入る頻度も上げる……。だから……えっと、ひとつ屋根の下にいるのだけはどうか許して欲しいんだ」
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