5.それぞれの本音

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「頭は打ってないってことだったけど」  そこでカルテと律顕(りつあき)を交互に見つめた伊藤に、「はい、倒れる直前に僕が抱き止めたので」と律顕が返して。  美千花(みちか)益々(ますます)混乱するばかりだ。  確かに倒れる間際、誰かが近付いてくる気配がして。美千花自身も赤ちゃんを守りたい一心で必死に手を伸ばした覚えがあるけれど……。  もしかして、あれが律顕だったと言うのだろうか? 「とりあえず我慢出来そうにないなら痛み止めも使えるけど」  伊藤の申し出に、美千花はフルフルと首を横に振った。  耐えられないほどではない。  それに、美千花のこれはきっと精神的なものだから。  律顕ともっとちゃんと話して、もしも不安が取り除けたならば、自然に回復していけると思う。  お腹の赤ちゃんのことを考えると、なるべく薬は使いたくない美千花だ。 「分かった。でも、もし耐えられないぐらいしんどくなったら遠慮なく言ってね? いい?」 「はい」  美千花がしっかりと首肯(しゅこう)したのを確認してから、伊藤らは病室を出て行った。
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