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「――それでね、最近何だか律顕のことが嫌で嫌で堪らないの」
カフェに、ほんの少しお食事要素が加わったみたいな小ぢんまりとしたお洒落な店内の窓際の席で。
身体のラインがくっきりと分かるスーツに身を包んだ痩身の蝶子は、いかにも現役の受付嬢と言う華やかさを身にまとって美千花の向かいに腰かけていた。
対して、まだ妊娠のごくごく初期で、そんなにお腹が出てきたわけでもないのにずっと気持ち悪くてゆるっとした服しか身に着けられない美千花は、ちょっぴりそんな蝶子のことをうらやましく思ってしまう。
席に着くと同時に出されたお冷へ、舌を湿らせる程度に口を付けて眼前の華やかな蝶子を見詰めたら、見る間に瞳を見開かれた。
「え? ちょっと待って美千花。それって……早くも離婚の危機ってこと?」
美千花とは対照的。
ごくごくと美味しそうに半分ぐらいグラスの水を飲み干した蝶子が、大きな目でじっと美千花を見詰めてくるから。
「ちっ、違う違う! 別に嫌いになったわけじゃないの」
美千花は慌てて蝶子の言葉を否定した。
そこで注文していた品が運ばれてきて、一旦言葉を切って。
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