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結局固形物は食べられそうになかった美千花は、アイスクリームを頼んだ。
きっとそんな美千花を気遣ってくれたんだろう。
あまり匂いの濃くないもの……と探して頼んでくれたサンドイッチセットが目の前に置かれるや否や、蝶子は綺麗にネイルが施された手指で、お皿からハムサンドをひとつ摘まみ上げた。
「……律顕のこと、別に嫌いになったわけじゃないんだけど……何だろう? 距離を詰められることに生理的な嫌悪感を覚えてしまうというか……。上手く言えないんだけど……そんな感じなの」
それを口に運ぶ蝶子をじっと見つめてそう付け加えたら、もう一度「えっ」と言われてしまう。
蝶子を倣ってほんのちょっぴりすくい上げたバニラアイスを口に含もうとしていた美千花は、彼女の声に思わず動きを止めた。
「それってさ、永田さん――あ、美千花も永田さんか。えーっと……旦那さんは怒らないの?」
実は律顕と美千花は社内恋愛の末に結婚したカップルだ。
受付にいた美千花に、営業の律顕が熱烈にアプローチしてゴールインした形。
結婚を機に美千花は仕事を辞めて家庭に入ったけれど、今も変わらず受付嬢を続けている蝶子と、営業として第一線で働いている律顕は、毎日のように会社で顔を合わせる仲だから。
蝶子は友人として付き合っている美千花のことも気にはなるけれど、面識のある律顕に対してもそれなりに同情してしまうらしい。
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