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蝶子から痛いところを突かれた美千花は、「分かんない」と正直な感想を漏らした。
「分かんないって……どういうこと?」
サンドイッチにかぶりついた蝶子が、意味不明とばかりに問いかけてくるけれど、そのままの意味なのだから答えようがない。
「う〜ん。うまく言えないんだけど。表面上はちっとも怒ってない、かな。だけどね、時々すっごく悲しい顔をされちゃうの」
先日の妊婦健診でのアレコレを思い出した美千花は、素直にあのとき感じたままを蝶子に伝えた。
蝶子は少しだけ考える素振りを見せてから小さく吐息をつくと、「そっか。けどごめん。率直に言わせてもらうね」と前置きをして。
「話を聞く限りだとさ、永……じゃなくて旦那さん。私からすると何だかめっちゃ不憫に思えちゃうんだけど」
と、美千花にとってグサリと来る言葉を投げかけてきた。
「うん。私もね……そう思う。だから余計に心が痛いの」
溶けて白い液体になりつつあるアイスを、食べるでもなくつつき回しながら溜め息を落としたら、
「ねぇ美千花。正直な話、妻の妊娠中に浮気する男も多いって言うじゃない? 彼に限ってそんなことはないと信じたいけど……でも……絶対なんてどこにもないから。――美千花も十分気をつけなね?」
蝶子から声を低めてそう言われて、美千花は素直に「うん」と答えながらも心のなか、(そんなの私が一番心配してるよ)とつぶやいた。
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