翔太さんとの出会い

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「ん……。」 今何時……?時計を見ると22時をすぎたところだった。 ーガチャ、 いつものように扉の前には夜ご飯が置いてあった。私はそれを部屋に入れ食べ始める。 いつもなら食べなかった。いつもなら……。 半分食べた私はいつもの薬を飲み、夜の世界へと飛び出した。 『……しず……。』 私を呼んでるのは誰? 辺りを見渡しても誰もいない。あぁ、いつもの幻聴か……。 『あんたさえ生まれて来なければあの人は私を見てくれるのよ!?』 『雫が死ねばみんな幸せになれるの!』 『お母さんの幸せのために死んでくれない?』 「うぅ……っ、……」 私じゃおかあさんの幸せにはなれないの? いけない、昔のこと考えてもいいことないのに……。 「雫……?」 今度は誰?私を呼んでるのは?もう嫌だよ……。 あんな思いするのは……。 「……さとみ、くん?」 「やっぱり雫だ……。こんな時間にどうしたの?」 私の目の前に現れたのは翔太さんではなく、幼なじみのさとみくんだった。 「散歩的な……?」 「ふふっ、出た雫の疑問形……。」 「どうして……ここにいるの?」 率直な疑問だった。 さとみくんは夜出歩く人なんて思ってなかった。 「飲み物買いにコンビニ行こうと思ったら、雫に似た影見つけて追いかけたら雫だったってわけ。」 なんだ……コンビニ行こうとしてただけか…。 「じゃあ今度は僕の番ね、雫はなんで泣いてるの?」 「えっ?」 頬を触って見ると確かに濡れていた。 今も瞳からは涙が溢れてくる。 「なんでだろ?わかんないや。」 ーギュー、 いつの間にか私はさとみくんに抱きしめられていた。 「また1人で抱え込んでる。そんなに僕じゃ頼りない?」 「そんなわけない!さとみくんにはすごく助けられてる。今だって、フラッシュバックから助けてもらった。いつだって辛い時そばにいてくれてる!」 昔からそう、私が苦しい時、そばにいてくれたのはさとみくんだった。 「でも、君を心の底から笑わせることができてない。」 「そんなの……。」 もうできないよ……。あの日から……。 「もう一度でいいんだ。雫の心の底から笑った顔が見たいよ。」 私はもう何も言えなかった。言えなかったんじゃない、言いたくなかったんだ。 これ以上さとみくんに辛い思いさせたくなかったから。 「じゃあね、さとみくんっ。」 私はその場から一刻も早く立ち去りたくて走り出した。幸いにもさとみくんは追いかけては来なかった。多分追いかけることが出来なかったんだと思う。 「はぁ……はぁ……っ、……。ははっ、何やってんだろっ、」 無我夢中で走り、気がつくと、翔太さんと初めて出会った場所に着いた。 「ここで翔太さんと出会ったんだ。翔太さん、会いたいな……。」 まだ2回しかあっていない人なのに色んな思い出があった。 一緒に追っ手から逃げたり、一緒に帰ったり、白龍に遊びに行ったり、たくさんの楽しい思い出をくれた。もう他人とは言えない関係になった私たち。もしかしたら私たちは運命の相手だったのかもね……なんてね。そんなこと思ってた。
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