翔太さんとの出会い

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「はぁ…はぁ…っ……。」 「撒けたか……くっ……。」 だいぶ走ってもう走れないってところで相手がいなくなっていた。 私の手を引っ張っていった人もきつそう。 って何考えてるんだろう。急に肩は掴まれるし急に走り出すしで、てんやわんやだよ。 「急に悪かったな…ってお前誰だ……?」 わ、私の方こそあなた誰ですか!? 「悪ぃっ…知り合いと見間違えてた…。」 パチンと手を叩き、謝ってきた。 「み、見間違えたならしょうがないし、謝らないでください。」 「……」 ずいっと近づいてきてじっと見つめられる。 運がいいのか悪いのか月明かりが照らし始め初めて互いの顔が見えるほど明るくなった。 「な、なんですか?」 「お前、可愛いな……」 な、なんてこと言うんだろう?この人は…。 というよりこの人顔綺麗だな……。 男の人に綺麗って失礼なのかな? 「あ、ありがとうございます?」 「ふっ、なんで疑問形なんだよ…。」 わっ、笑った! やっぱり綺麗だな。 「お前、名前は?」 「柊雫です。」 「雫か……いい名だな。俺は翔太。」 「翔太さん?いい名ですね!」 翔太さんは目を見開いてびっくりした表情をしていた。 「いい名か……。そんなこと言うの雫くらいだぞ…。雫は俺が怖くないのか?」 ん?なんで……。そんなこと聞くの? 「なんでって顔してるな…。普通なら追いかけられたりしないだろ?」 「んーわかんないけど、こんなに優しそうな人が怖いわけない。」 「俺は優しくなんかないぞ?」 そうかなぁ?こんなに優しそうな人が悪い人なわけない。 「そうか…俺は白龍っていう暴走族に入ってる。」 「白龍って聞いたことあるよ?ここの地域の治安守ってくれてるところでしょ?」 「まぁ、そんな感じだな……。雫はあんな時間に歩いてたんだ?」 「散歩的な……?」 白龍はいい暴走族って聞く。 同じ高校の同級生も入ってるって噂も聞いたことがある。 「またなんで疑問形なんだよ…くくっ、おもしれーやつ……。」 「別にいいでしょ?ところで、翔太さんは?」 「俺は、いつもの見回りだよ。そこにちょうど紅蓮のヤツらが襲ってきて広いところで殺ろうと思ったら雫が居たから一緒に逃げたってわけ…。」 もしかして私のせいで走ることになった? 「ご、ごめんなさい…。」 「雫のせいじゃねーから謝るな。笑っとけ!」 ガシガシと頭を撫でられる。 『こんなこともできねーのかッ!!!』 「やっ!」 突然昔のことがフラッシュバックする。 ーバシッ、 「雫……?」 「ご、ごめんなさい。」 「大丈夫か……?どこか悪いのか?」 いきなりのことで自分もびっくりし、翔太さんの手を叩いてしまった。 「悪いところはない…とは言えない……。」 「その、涙拭いていいか?」 えっ…? 「翔太さん。泣いてるの?」 「雫の涙だよ…?」 そう言ってそっと翔太さんは私の頬に触れた。 ーツゥ……。 「雫の涙は、綺麗だな。」 「……?」 「誰にも汚されていない感じがする。」 翔太さん…それはそう見えるだけですよ……。 本当の私を知らないから。 本当の私を知ったら誰でも嫌う。なぜか翔太さんには本当の私を知って欲しくないと思った。
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