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なんにも聞かないでくれる翔太さんには頭が上がらない。
「しっかり休めよ…また今度来るな……会いたくなったら夜の世界に飛び込んでこい。」
「うん……わかった!夜の世界に飛び込むね!……またみんなにも、りんさんにも会いたいからね!」
「そうか…たのしかったんだな。アイツらも雫の事気に入ったみたいだからな」
「まだ離れたくないなぁ……。」
つい本音が出てしまった。
「そんなこと言うな…離したくなくなるだろ」
そう言ってギューと抱き締めてくれた。
初めて他の人に抱きしめられたのは…フラッシュバックするのかなと思ったけど全然平気で心が暖かくなった気がした。
「翔太さん、ありがとうございます!」
「急にどした?」
「別に、翔太さんと出会って色んなことが出来た。ご飯食べたり、ゆっくり寝たり、全部翔太さんのおかげかなって思ったからかな?」
「よくわかんねーけどいいことだけはわかった。」
そう言って頭をガシガシ撫でる。
癖なのかな?頭撫でるの?よく撫でられてる気がする。子犬じゃないんだけどな………。
「ふふっ、またね、翔太さん!」
「あぁ、またな、雫……。」
翔太さんの歩いてく後ろ姿を見ながら涙が出てきた。
「ふぅ……うゔ……ぐすっ……。」
憧れちゃだめだ。憧れちゃダメ。
私は誰も来ない世界で生きてく必要があるから。
ーガチャ、
「あら、雫ちゃん、大丈夫?!」
「寧夏さん、すみません大丈夫です。」
無理に笑う私に対して寧夏さんも苦しそうな表情をする。
こうでもしないと迷惑をかけてしまう。
泣き叫んでしまう。こうしないと自分の心が保てないんだ。
「 そう……リビングにおいで…紅茶入れてあげるから。あと、今日は病院だから送ってくわね。」
「はい、ありがとうございます…。」
寧夏さんも何もしないでそっとしておいてくれる所も優しくて嬉しく思う。
寧夏さんの入れてくれた紅茶は、心まで暖かくしてくれて、少し気持ちがスーとなった気がした。
そうして自室に戻った私は、服を着替え、病院へ行く準備をした。
ーコンコン、
「そろそろ行こうかしら?」
「はい…。」
私にとって病院は安心できるところだ。
仲のいい看護師さんとか先生がいて、なんでも気がついてくれる。何より、周りに同じことで苦しんでる仲間がいると思うと思ったらいけないのかもしれないけど嬉しく思う。
「いらっしゃい、雫ちゃん。」
「長谷川さん、こんにちは……。」
「あら、今日は調子悪そうね?」
私の一言でこんなふうに調子がいいのか悪いのか読み取ってくれる長谷川さんは大好きだ。
だから長谷川さんの前ではなるべく元気でいたいって気持ちがある。
「先生が呼ぶまでこっちにいる?」
「いいの……?」
「いいわよー!いてくれる方が楽しいし……!」
いそいそと私は長谷川さんの隣に座る。
それだけで安心する。
「なにか最近、変化あった?」
「最近ね、夜の散歩の途中で翔太さんって人と出会えて、白龍っていう暴走族と仲良くなった。」
あっ、暴走族と仲良くなったって言わない方が良かったかな?
「あらっ、いいわねー、青春って感じで。楽しそうだわー!」
あれ?反応と少し違ったけどまぁいいか。
「柊雫さーん、先生がお呼びです。」
「じゃあ行ってくるね長谷川さん!」
「行ってらっしゃい雫ちゃん!」
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