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理沙
四. |理沙
理沙は、近くにある私立高校の三年生だった。私立とは言っても、理沙の学校は、セレブの子女が通うような、超一流私立ではない。だから、毎日、学校で授業が行われているわけではなかった。週に三回だけ、登校日が設けられている二流私立校だ。
一流校のほとんどが、週三日以上は登校でき、クラブ活動ができる所もあるが、理沙の学校は、辛うじて、週三日の登校日が設けられてはいたが、クラブ活動は禁止だった。だから、学費もそれなりの金額だ。公立よりは高いが、私立の中では安いほうだ。でも、公立と比べれば、活動の幅は広く、課外学習にも連れて行ってくれるし、委員会などの活動もあった。
理沙の両親は共働きだ。父親も母親も働いているが、そう裕福な家庭ではない。しかし、教育熱心で、理沙の将来の為にと無理をして、この学校に通わせてくれていた。それに加えて、理沙が五歳の時、習い始めたヴァイオリンを、こんな状況になっても続けさせてくれている。
理沙のヴァイオリン教室はオンラインでは無く、対面レッスンだった。もちろん、先生と理沙の間にはガラスの仕切りが設けられてはいるが、それでも、オンラインレッスンより、ずっと音環境はいい。それ故、当然、オンラインレッスンより、遥かにお金がかかることは言うまでもない。だから理沙は、最高とは言えないが、普通の人より少し、いい教育を受けさせてもらっていることに、とても感謝をしていた。
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