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始まり
二. 始まり
2XXX年秋。大陸にある、小さな町で新型ウイルスが発生した。最初は、異国の小さな町で流行っている単なる風邪であったが、感染者がどんどん増え、やがて、国中に広がった。
そのウイルスについて、当初、WHOは、このウイルスを軽視し、特別な対策を打ち出そうとしなかった。この初動の遅れが、後に世界的なパンデミックを引き起こす原因となる。ウイルスは瞬く間に世界中に広がり、WHOが、緊急事態宣言を出した頃には、食いとめるには、もはや手遅れで、結局、このウイルスのせいで世界中がパニックに陥り、多くの死者を出すことになる。
ウイルスに慄いた世界の国々は、これを「ウイルスとの戦い」と宣言し、渡航禁止や入国禁止の政策を次々に打ち出すと、人の往来を一時的に止める都市封鎖に乗り出した。人が生きて行く為には、物資の流れを止めるわけに行かず、食料や生活品等の輸出入は、かろうじて行われていたが、どの国も事実上の鎖国状態であった。この日本でも、ライフラインで働く、エッセンシャルワークと言われている人たちを除いては、皆、自宅待機となった。
小学生だった理沙も、その時のことはよく覚えている。いつもは仕事に出かける父母が、その時は家にいて、在宅で仕事をしていた。理沙は、まだ、子供だったので、学校が休みになるのを単純に喜んでいたが、暫く経つと友達に会えず、じっと家に籠っていることに飽きてくると、ストレスが溜まり、わざと騒いで親に叱られた。
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