レッスン

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 その先生は、街の小さなオーケストラのヴァイオリニストだった。しかし、ウイルスが発生して、まだ、間もない時、ウイルスに感染して死んでしまった。それで、お母さんが、ガラス越しで勉強できるこの教室に理沙を送り込んだのだ。でも、本当のことを言うと、ガラス越しには、先生の動きはわかっても、本当の音はわからない。  理沙は、バッグから楽譜を取り出し、譜面台に置いた。そして、楽器を持つと、一つ、大きく息を吐き、次に、息を「フッ」と吸い込むと同時に、ヴァイオリンを弾き始めた。    レッスンが終わると、先生が、 「理沙ちゃん、上達したわね」  と言ってくれた。その言葉を聞いて、理沙は、素直にうれしいと思った。理沙は、特にヴァイオリニストを目指しているわけではなかったが、ヴァイオリンの音がとても好きで、きっと、自分は、一生、ヴァイオリンを弾き続けるのだろうと思っていた。 「もう少し、上達したら、もっといい先生を紹介できるわ」  先生がそう言ったので、 「いい先生って?」  理沙がガラス越しに、尋ねると、 「街のホールで音楽教室をやっているのを知っている?」  先生が、楽譜を片付けながら、理沙に視線を送る。 「はい」 「そこで、ナショナルオーケストラのコンサートマスターが、月に一回だけ、教室を開いているそうよ。そこを紹介するわ」 「へえ、いいんですか。そんなすごい先生に見てもらえるなんて、私、すごく、うれしいです」 理沙は顔をほころばせて、そう言ったが、一瞬、考えると、 「先生、でも、それって高いんですよね」  と尋ねてみた。
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