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理沙は、先生からの返事を聞く前から、きっと、レッスン料が高すぎて、家には、到底、無理だと思ってはいた。
すると、先生が、
「そうね。それなりの金額だけれど、それより、問題になるのは、仕切りも何もない、コンサートホールでレッスンするって所なの。先生は客席にいて、生徒が舞台で弾く。だから、ソーシャルディスタンスは取れているんだけれど、やっぱり、あれを心配する人は、敬遠しているみたい。だから、あんまり人が集まらないそうよ。それで、以前より少し安くなっているみたいよ」
と言って困った顔をした。
「そうなんですね。何だか、もったいない話ですね」
理沙がそう言うと、
「そうね。こんな状況になる前なら、どれだけお金を払っても、我れ先にと、レッスンに行ったのに」
と、先生は残念そうな顔をした。
理沙は、自分はそんなレッスン料は払えないから、実際は参加できないだろうとわかっていたが、先生から、ナショナルオーケストラのコンサートマスターを紹介すると言ってもらえたことが、とてもうれしかった。
「理沙ちゃん。また、詳細がわかれば連絡するわ。でも、理沙ちゃんは、もう少し上達すると言うことが条件よ」
先生がガラスの向こうで微笑んでいる。理沙には、先生のその表情が、何だかとてもうれしそうに見えた。理沙は、先生が、自分が上達していることを一緒に、喜んでくれているのがうれしかった。
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