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「うちだってそうよ。だいたい、父なんかモニターすら付け忘れてたって言うんだから、もう家族崩壊ね」
画面に真由の呆れ顔が映し出された。
「真由んちはみんな潔癖症なのね。茜のとこはどうなの?」
理沙が、尋ねると、
「うちはみんな一緒にいるよ。食事が終わったら一緒にテレビを見たりするわ」
と茜が答えた。すると、ベッドに移動して寝転んだ真由が、驚いて声をあげた。
「そうなんだ。いいね。私なんか、もう、お母さんの手の感触なんかわすれちゃったわ」
真由は、天井に向かって叫んだ。理沙は、その様子をモニター越しに見ていて、「フフフ」と笑った。
「でも、うちだって小学生の頃に比べたら、家族団らんの時間は減ったわ。それぞれの部屋にいる時間が増えたかな。個人行動が増えたっていうか」
茜が真由に気を使って、申し訳なさそうにそう言うと、
「何だか、皆、バラバラだよね」
とベッドの上で仰向けになっている真由が、天井に向けて話しているのが映った。
「そうそう。クラスだってさ。みんな何を考えてるのかわからないもの」
理沙は、そう言うと、マニキュアを塗り終えた手に息を吹きかけ始めた。
「うん。誰が誰と仲良くしているのかすら、もはや謎だもの」
と茜。
「たまに、学校に行っても、みんなガラスケースの中だし、ヘッドセットで話してるじゃない? 視線や顔の向きなんかで、あの二人は会話してるんだとわかるけど、もう、何の話をしてるかもわからない」
真由は相変わらず、天井に向かって話している。
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