1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
2006年2月、私は雪の中で夕日を見上げていた。
かつて私には彼氏がいた。けれども、先月、正月早々振られてしまった。
ふとオレンジ色の携帯電話を見つめる。
そこには元カレからのメールが入っていた。
「ヨリを戻さないか? タケシ」
――絶対にアイツとヨリなんて戻すものかよ。
僕がアケミのことを振ったのは確かだ。
ヘタレな僕は気が強いアケミのペースについて行けないのは確かだった。けれども、あの時の一言はちょっと余計だったかもしれない。
だから、僕はアケミとヨリを戻したかった。
それだけが今の僕の願いなんだから。
携帯電話の待ち受け画面にペンギンがいる。
だからそれがどうしたって話だけども、今の私の癒やしはこの待ち受け画面しかない。
その時だった。
「――ねぇ、タケシくんとヨリを戻したいんでしょ?」
突然携帯電話の中のペンギンが喋りだした。
私は少し、戸惑ってしまった。
「そうなのよ。もしかして、さっきのメール読んでた?」
「携帯電話の中に入っている以上、メールは読まざるを得ないからね。そう言えば、来週はバレンタインデーだったよね。」
「バレンタインデーか・・・。今の私には関係ないかな。」
「いや、関係大アリ。とりあえず義理チョコで良いからタケシくんに何かあげるんだ。」
「分かったよ。とりあえずチロリンチョコでもあげておくから。」
「上手く行けば良いんだけどな。えへへ。」
2006年2月14日。
どこかの駅の時計台前。
僕は、携帯電話を握りしめながらアケミを待っていた。
「ごめん、遅くなった!」
それは紛れもなくアケミだった。手には小さなチョコレートが握られていた。そして、僕と同じオレンジ色の携帯電話を持っていた。
「あっ、アケミの携帯電話って僕と同じ携帯電話じゃん。色まで一緒だ。」
「あの振られた日の夜から、私にしか出来ないコトがないか考えてみたけれども、矢っ張りタケシと一緒にいることが今の私に出来るコトだとこのペンギンが教えてくれたんだ。」
「まさか待ち受け画面のペンギンが教えてくれるとはな。面白いこともあるもんだ。」
こうして僕とアケミはヨリを戻した。
それは、アケミのオレンジ色の携帯電話に住むペンギンが教えてくれたことだった。
最初のコメントを投稿しよう!