5月の空

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5月の空

長期休暇で仕事から離れ、自由な時間が手に入った。 ふと目覚めて時計を見ると正午を過ぎていた。 多少の頭痛を覚え気分転換に外の空気吸いに出かけた。 朝から何も食べていないので腹も減っていたのだ。 コンビニでサンドイッチを買い近くの公園で食べようと思いついた。藤の花が綺麗な公園だ。 ベンチに座ろうと立ち寄ると、既に女性の先客がいた。 普段は見知らぬ人に声を掛けたりはしないのだが、快晴の今日、彼女は傘を持っていた。 体格に似合わずスラッと長い上等そうな傘だ。 スマートホンを開き天気予報を見てみたが連日快晴の予報となっている。 「今日は雲ひとつ無い良い天気ですね」 彼女は空を見上げた。 「少し肌寒いですが良い天気です。 ベンチ、座りたかったですか?」 「いえお気になさらずにどうぞ」 そう言って立ち去ろうとしたが気を使わせてしまったのか 「良かったらお隣どうぞ」 小っ恥ずかしい気もしたが3人は座れるようなベンチなので端の方に腰掛けることにした。 「すみません。気を使わてしまったようで」 「私のベンチじゃありませんので」 そう言って彼女は微笑んだ。 どうして傘を持っているのか聞こうとも考えたが辞めた。日傘なのかもしれないのだ。 しかしこのベンチ日当たりがかなり良いため 日傘なら差すのでは?と思ったりもする。 会話もなく気まずい時間を一時過ごして中身のない言葉を発した。 「ここは日当たりが良く眩しいですね」 「そうですね。暖かくて気持ちいいです。 藤の花は満開ですかね?」 「綺麗に咲いてますね。満開だと思います。」 そう答えると彼女は 「良かったです。青空と藤の花。やっぱりこの公園は素敵ですね。私花の香りが大好きなんです。」 少し間を置い彼女は言った。 「私…目が見えないんです。」 心地よい風が吹いた。 「今日は楽しかったです。ありがとうございました。」 そう言って彼女は微笑み立ち上がった。 「こちらこそ急に話しかけてすみませんでした。またどこかで」 「その時はまた声掛けてくださいね」 そう言って彼女は微笑み会釈をすると 地面に傘で弧を描くように往復させながら去っていった。 空を見上げると真っ青な空と白い雲が目に入った。 しまった。 彼女には今も雲ひとつ無い空が見えてるのだろうか。
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