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カルロのバースデーパーティは翌日に仕切り直された。
せっかくのパーティなのにボアパーティとまざっちゃうと残念だもの。それで私たち同期はカルロにプレゼントを送った。他の幼なじみは革の包丁入れの他は農園で働いて作った極上のクレアの葉っぱと、私たちが行きそびれたホーク鳥の卵とアークビーの蜂蜜。みんながみんな食材だ。当然と言えば当然だ。だってミレルがカルロのケーキを食べたとき、本当においしそうだったんだもの!
私たちのプレゼントはもちろん私たちが最初に取ってきたビッグボアの前足。
「私たち頑張ったよ! 凄いでしょ!」
「おう、スゲェな。皆もスゲェ。それでやっぱり……」
「もちろん! これで美味しいもの作って!」
「はぁ、やっぱりか」
カルロの眉毛がちょっと下がる。だってカルロは料理人の卵なのだ。
だからこの皆がとってきた食材でカルロが料理をしてくれる。サプライズパーティでもお礼は必要。ミレルは得意な歌を歌ったのだけれど、カルロが得意なのは料理なんだからそれで返してもらわなくっちゃ。
カルロは食材を見渡す。ボア肉、クレア葉、ホーク卵、蜂蜜。
「うん、決めた。ちょっとまってな」
カルロの行動は手早かった。
玉ねぎを揚げ焼きして1センチ角に切ったボア肉を蜂蜜を絡めて炒めて色が変わったらにんにく、しょうが、八角なんかのスパイスを加えて更に炒める。それに醤と砂糖とお酒を水を加えて沸騰したら5分ほど煮込み、玉ねぎとゆで卵を加えてさらに煮る。
その時点でもうクラクラするほど甘い香りが辺り一面にただよった。やばい、蜂蜜ボア、最強。それにとろみがでたらオイスターソースとか更にスパイスを加える。
丼飯の上にクレアの葉を引いて、肉と卵の炒めものをその上に豪快にのせる。
「おまたせ! 長老ボアのルーロー飯だ!」
「うわぁすげぇうまそう!」
とろとろの肉にあん。なんかもうお箸を取る前から口の中がよだれまみれだ。
一口肉を頬張って噛みしめるとかしゅっという揚げたクリスプな食感が弾けてその下の肉に歯が到達すると、蜂蜜と甘辛く煮た香りと力強く野趣あふれるボア肉の強烈なインパクト。そしてそれにふっくらごはんとくればもうたまらない。
気がつくとごはんが3杯もお腹に消えて、みんなばたりばたりと床に横たわっていた。
「めちゃめちゃ旨い、意味分かんないくらい旨い」
「ほんとほんと。まじヤバい」
「また作って」
「リザとミレルがまた長老ボアを狩ってきたらな」
「ええーちょっともう無理ー勘弁してー」
「来年はもっと違う美味しいの狩ってくるよ」
「楽しみにしてるぞ」
ううん、でも本当に美味しかった。
だから来年は……何を狩ろうかな。
あのビッグボアよりはもう少し、簡単に倒せるやつにしよう。
了。
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