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「ほら、勝ったんだから早くスタンバって。早くしないと夜になっちゃうわ」
「うぇぇだって」
「だっても何もない!」
少し開けた場所のど真ん中にの地面にくくり罠を設置して埋めて、少し離れたミレルの近くにある木にその端っこを設置。
そして私はくくり罠の近くにぽつんと立つ。ええと、さっきビッグボアはあっちの丘のある方向に走っていったから、いや、そもそもあれから既に30分ほどは時間が経っているし移動している気もしなくはない。
はぁ。いや、ここに居る限りどっちにいったかは同じではある。背後から来たら罠をぴゅんと飛び越えて反対側に飛んでビッグボアが直線的に走ってくるのを罠にかけるわけだし。
そう思うとちょっと足がすくんだ。
やっぱりミレルが囮をやるべきだよ。私は中衛だよ? 1番前の前衛にいるのはミレルの役割じゃんか。なんか間違ってる! それに怖い。まじで。
「ほら、準備はいい?」
「えと、よくないけど、いい」
「なんなのよもう。どっちなの。じゃあ大声を立てて」
「まってまって怖い」
少し離れたところからため息が聞こえた。
ミレルは木の陰に隠れてビッグボアが罠を踏んだタイミングでくっついてるロープを思いっきり引いてビッグボアの足にかかるロープの輪を引き絞る。そこまでできればあとは自動でミレルの隣の木にビッグボアの足が吊り上げる、予定だ。そういう罠。
でも私もミレルも直接ビッグボアを倒すことはできないわけだから、倒すならもうこの方法でやるしかないわけで。
よし。リザ、心を決めろ。一世一代だ。
気合一発大声を上げ、私の叫びは長く尾を引いて辺りに響き渡った、気がする。
耳をひそめる。うーん、もういっちょ?
そう思ったとたん、足の裏に小さな振動を感じた。そしてそれはドドドドと次第に地面を揺らして大きくなっていく。
うっそ、背中⁉ 背中から来てる⁉
急いでぴょんと罠を飛び越え構える。
構えるといっても弓を構えても仕方がないのでとりあえず拳を構える。ファイティングスタイル。前衛職じゃないから全然意味が無いけどね! やっぱりミレルのほうが良かったじゃんか!
そう思ってももう遅い。
なんだかよくわからないけど、というか姿が見えないけどビッグボアに違いない。その次第に近づく足音はどんどん大きくなっていき、ちらりと木立の隙間に見えたその焦げ茶の姿は、えっと、もの凄く、でかかった。
なんとなくこれまで一目散に逃げていて、聞いた話から奥の森にいるビッグボアは背丈2メートルくらいと聞いていたからなんとなくそうだと思ってたけど! いや、見えるこれって背丈が4メートルくらいあるのでは!?!?
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