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 光のない地底世界。北方に位置するは二区、通称ユニオン・ユースティティア。その南部に常闇の中でも目立つ朱色の建物が鎮座している。それはユニオンの端からでもはっきり見えるほど大きく、目を引く。それだけの存在感を放っているのだから、その真っ赤な建物を知らないユニオンの民はいないであろう。  軽々しく立ち入ることを許さぬ厳格な空気を感じさせる立派な建物は、ユニオンになくてはならない重要な意味を持っていた。  地底で立派な建物といえば区役所が上がる。ではその赤い建物が区役所なのかというと、そうでは無い。ユニオンは他の区と違い、一番立派な建物が区役所ではないという少し変わった特徴を持っていた。ちなみに、区役所はその隣の、民家と大差ない程ショボい直方体だ。  役所の存在感を無くすほど大きな建物の正面口に、背丈を遥か超える朱色の門がある。それをくぐると、立派な玄関が巨大な魔物のように口を開けて待っている。覚悟あるもののみ中に入れと言わんばかりの威圧感だ。勇気を持って顔をぐいっと上に向けるとその社の正体が分かるだろう。 『治安維持部隊 本部』  大きな木の看板にはそう書かれていた。
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