第4話・サレ夫婦の決意

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  「あ、新君、このピアスは・・・・そ、そう、マンションで拾ったの! 大切なものだと思うけれど、誰のものか解らなくて、私が預かっていたのよ。新君のママのピアスだったのね。良かったわ」 「そっかぁ! ひろってくれてありがとう」  神妙な顔をしていた新が納得したようで、にっこり笑った。咄嗟についた嘘だったが、誤魔化せたようで宏美もほっとした。 「そうだ、詩歌。おもちゃ箱を開ける時は、必ずママに言ってって約束したよね? ダメよ。勝手に開けたりしちゃ」 「ごえん(ごめん)なさい」  宏美との約束を思い出し、詩歌は眉根を寄せて反省している。 「玩具を取って欲しい時は、ちゃんと言ってね。箱、ぐちゃぐちゃになってないかしら。少し待っていて」  宏美は急いで子供部屋の方へ向かった。一緒に隠した他の証拠も散乱している筈だ。あれが何処かへ紛れ、万が一にも良平に見つかったら大変な事になる。  部屋に入ってひっくり返った玩具箱から、ホテルから送られてきた証拠となる伝票等が思った通り飛び出ていたので、急いで回収した。玩具をある程度箱の中へ直し、子供たちに再びこちらの部屋で遊んでおくように伝えた。  気まずい雰囲気だったが、改めて篤と対面した。  まさか夫の浮気相手が、仲良くさせてもらっている隣人の栗崎篤の妻だったなんて――  
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