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「あ・・・・すみません、少し・・・・混乱していまして・・・・・・・・」声を出すのもやっとだ。
「当然です。私も暫くはショックで、何も手につきませんでした」
そうは言うが、例の問題の日に宏美が泣いた以降、彼女が取り乱したり暗い表情を見せた事は無かった。誰にも知られないように内面に隠していたのだろう。一人でこんなに重い問題を抱えて――辛い日々を送ったに違いない。
それにしても、先程から体調が優れない。人様の家で迷惑をかける訳にはいかないが、気を抜くと倒れそうだ。もっとしっかりと向き合い、問題を解決しなければならないというのに、何とも情けない姿。こういう所が自分のダメな所なのだろう。男の癖にメンタルが弱いと、何時も百合に嫌味を言われる。その度にみぞおちが痛くなるのだ。
嫁より稼ぎが悪く、精神面でも劣っていて、その事を何時も責められる。百合と一緒に生活をしていると、人としての尊厳や男のプライドは、ズタズタに引き裂かれるのだ。
今までの篤なら、百合の浮気を知っても泣き寝入りをしていただろう。どうせ自分に非があるから、と浮気をする嫁に対して見て見ぬふりをしていたかもしれない。というのも、心の何処かで百合は他に複数の男がいるだろうと、薄々感じていたから。
そう思う理由のひとつとして、百合はセックスが大好きな女性だからだ。にもかかわらず、現在篤と百合は、セックスレス。
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