第4話・サレ夫婦の決意

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 以前は気乗りしない時でも、半ばレイプのように体関係を強要された。実家を救ってくれた恩があるため、嫌と断れないしがらみに、無理やり搾取される精――新が産まれるまで続いたが、ある日を境にぱったりと彼女からのお誘いは無くなった。しかし篤はどこかで安堵していた。  使いものにならない時でも、無理に欲情させられるあの苦痛を味わうくらいなら、一生セックスレスでもいいと思っていた。男として女性を抱きたいと思う雄の本能は人並みにあるが、百合と一緒にいる以上、そういう事は望めない事も解っていた。篤は他の女性で発散するような、奔放な性格では無かったから。  かといって、百合を抱く気にはなれなかった。彼女を抱くのは、恐らくもう不可能だと自分でも解っているため、誘う事もしないし、誘われない事を願っている程だ。忘れた頃に沸き起こる性欲については、ひたすら我慢を続けた。  時折、何のために生きているのだろうと虚しくなる時があった。全く自由の無い苦しい生活。尊厳もプライドも打ち砕かれ、男性としての悦びさえ二度と持つ事は不可能な日々。  新という宝物がいなければ、書き置きを残して何処かへ消えていたかもしれないと思うほど、篤は百合との生活に疲れ果てていた。そんな時に、宏美に出会ったのだ。
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