本物の気持ち

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 日夏のウィークリーマンションに向かう途中、日夏の妻は川沿いに秋元と空木の姿を見つけた。  空木のことは以前から日夏のSNSを見て知っていたらしい。最初、空木のことは日夏の仲の良い友人だと思っていたが、女の第六感で二人の不穏な関係に気がついた。  日夏夫婦は日夏が東京に帰ってきてからそのことで大喧嘩。そこから別居状態となった。  なぜ博多にいるはずの男が東京に? と空木を見つけてすぐに思ったらしい。まさか夫をつけ狙ってきたのではないかとも。  目の前の夫の浮気相手は笑顔だった。そして見ていると二人は恋人同士のようないい雰囲気だ。夫だけじゃない、この男のことも自分のものにしようと狙っているようだ。なんて貪欲で嫌な男なんだろうと空木のことを侮蔑した。  自分は苦しんでいるのに、幸せそうな浮気相手が許せないと思った。こっちが壊れるなら、空木も不幸になればいいと子供まで使ってひと芝居打った。  空木と秋元の仲を引き裂いてやりたかった。空木に文句を言ってやりたかった。  ……ということらしい。  日夏の妻が空木にぶつけてきた言葉は演技とは思えなかった。日夏を取られたと空木を恨んでいたからこその、本気の言葉だったのだろう。
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