猜疑心

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 これは間違いない。  こいつも日夏と同じだ。どうせ本命は東京にいて、出張先なら遊んでもバレないだろうと空木を騙しているに違いない。  それならばさっきからの「可愛い」だの「君を手放したくない」だの空木への愛情オンパレードの言葉にも納得がいく。 「わかりました。考えてみます」  今の空木は半ば投げやりになっている。 「本当か?!」 「はい。まぁ、どうせあまり会わないでしょけど」  今日だって秋元がたまたま出張に来たから会っただけだ。次いつ会えるかもわからない。どうせなら潔く「出張の間だけの遊び相手になってくれ」と宣言してくれた方が気が楽だなと思う。 「俺と君の休みが合うのは日曜日だけだ。土曜の夜から空木君に会えるように毎週俺が博多に行くよ」 「え……?」  意外な提案だった。毎週末、空木に会いに来るつもりなのか? 東京から……? 「ダメか? あ! 毎週はさすがに迷惑か……」 「いや、そうじゃなくて、それじゃさすがに秋元さんが大変ですよ」 「俺は構わない。だって空木君に会うためだから」  秋元は平然と言ってのける。  本気……なのか……? 「わかりました。じゃあ無理のない範囲で適当に俺に会いに来て下さい。日曜は俺、だいたい暇ですし」 「ありがとう。俺、空木君のこと絶対に大切にするから」  秋元はそっと空木の手を握ってきた。その手を人目につかないように背中と鞄でほんの少し隠すようにしながら。  束の間だけで、すぐに離してしまったが、秋元と繋いだ手は心地良かった。日夏から受けた傷が少しだけ癒やされるような——。  秋元との関係はいつまで続くかわからないが、友達でも恋人でもなんでもいい。休みの日に一人きりでいると、嫌なことばかり思い出してしまう。遊びの付き合いでも悪くないなと思っていた。
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