光の魔女

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 光の魔女。  こと光を操ることに関しては唯一無二。並び立つ者は誰もいないとされる。  その姿は神々しく、その笑みは慈愛に満ち、その言葉は麗しい。  その魔女を、多くの人々が崇拝した。多くの人々が、善良にして至高の魔女と讃えた。  魔女はその崇拝に応え、街や村をまわり、祭典と称した魔法の宴を見せ、人々を魅了した、  無双の魔法使いであり、人々の崇拝の的であった光の魔女には、しかし大きな欠点があった。  それは――光の魔法しか使えないこと。  他の魔法が一切使えないというだけではない。光の魔法以外のすべて、日常の生活に必要なことの一切ができなかった。  その欠点を補っているのが、それらすべてを担っているのが、光の魔女の弟子だった。  弟子は、魔女のあらゆる要求に応えるため、あらゆることを学び、あらゆることを身に着けた。  数え切れぬほどの魔法の数々、様々な料理の方法、効率的な洗濯掃除、等々。必要と考えれば自ら学び、あるいは誰かに教えを乞うて、壮絶な努力の結果、すべてを身に着けていった。  ――最優の弟子。  ――完全無欠。  ――あらゆる者。  いつしか、弟子はそう呼ばれるようになった。かの最高位の魔女たちでも、敬意を払って一目置いている存在だった。  その実力から、弟子は光の魔女の元を離れ、一人立ちすることも十分に可能だった。しかし、弟子は一向にその気配を見せず、ずっと光の魔女の元にいた。  ある魔女が戯れに理由を聞いたところ、弟子はこう答えたという。 『私以外に、誰があの人の面倒を見られるんですか』  それが本当の理由なのか、はたまた隠している別の理由があるのか――それは弟子にしかわからない。
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