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真っ暗の夜の帳の下、その赤子は泣いていた。
朽ちた小屋の玄関前。布にくるまれ顔だけが覗く、男か女かも判然とせぬほどの小さな赤子。
いつからそこで泣いているのか、いつまでそこで泣いていられるのか。
すすり泣きの声とともに、その赤子は泣いていた。
そこへ、光が差した。
夜闇をすべて消し去るほどの、まばゆい光があたりに満ちた。
「あら、何かと思えば」
光の中心には女がいた。白き衣と光を纏った、神々しい女がいた。
女は跪くと、両手で赤子を抱きかかえ、その顔を覗き込む。
「まぁ、なんと可愛らしいこと」
微笑みかけるその顔は、聖女や天女を思わせるほどの慈愛に満ちていた。
――しかし、赤子は泣き止まない。
「いい子いい子。泣かなくていいのよ」
泣き続ける赤子をあやしながら――光の魔女は歩き始めた。
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