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辺境の山村にふさわしい古びた家で、光の魔女とその弟子は歓待を受けた。
「遠路、よくお越しいただきました。村民皆々、心待ちにしておりました」
村長の言葉に、ふたりは揃ってお辞儀して答える。ただそれだけで、座っている椅子がギシリと軋んだ。
「どうぞお飲みください。こんなものしかありませんが」
卓上に出されたのは、森の木の実と野草を配合した茶のような何か。当然、茶菓子の類はない。
ふたりは揃っていただきますと答えて口をつけ、一口飲み下すと、揃ってコップを置いた。
「お口に合いませんでしたか?」
不安そうな村長の声に、ふたりは揃って答える。
「いえ、とってもおいしいお茶ですわ」
「あまりおいしくありません」
答えてすぐ、光の魔女は満面の笑みで、弟子は仏頂面で、互いの顔を見合った。
「せっかくいただいたのに失礼よ?」
「正直に伝えた方がいいと思います」
そのまましばらく、ふたりは顔を見合わせていたが、
「すみませんね、不肖の弟子で。それよりも」
微笑み顔のまま、光の魔女が村長へと向き直る。
「祭典はいつになさいます? 何なら今夜でも構いませんけれど」
「滅相もない。長旅でお疲れでしょう。今日はゆっくりとおやすみになって、また明日の夜にでもと」
村長の気配りに、しかし光の魔女は首を振る。
「皆様も祭典を心待ちでしょうし、早い方がよいと思います。それに、弟子の見立てでは今夜は雲ひとつない晴れのようですが、明日はもしかすると雨が降るかもしれません。いかがでしょう?」
主役の魔女にそこまで言われては、村長としても断るわけにはいかない。
「わかりました。それでは今夜としましょう。村の皆にもそう伝えます」
「よろしくお願いいたします」
ゆったりとした所作で頷く光の魔女。その隣で、弟子がやれやれと息を吐いた。
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