55人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
京丹後の鬼伝説
「大江山にゃ、数多の鬼伝説が残っちょる」
婆様はボソリと語りだした。
「源頼光が酒呑童子を退治した頃から遡ること400年。大江山には栄胡、足軽、土蜘蛛と呼ばれた三鬼がおったんよ」
婆様は何かに怯えるかのごとく、声を落とした。
「三鬼を退治したのは、聖徳太子の異母弟の当麻皇子じゃった。
栄胡、足軽を大江山にて打ち倒した当麻皇子は、土蜘蛛に迫った。
野を越え山を越え谷を越えて逃げ延びた土蜘蛛は、とうとう海辺まで追い詰められた。
最後はここ『京丹後の立岩』に封じ込められたんじゃ。二度と再生できひんよう、全身をバラバラに切り裂かれてのぅ……」
凄惨な話の内容に、幼い多々羅は息を呑む。
「今でも風の強い日の夜は、立岩から鬼がむせび泣く声が聞こえるのよ」
婆様はブルリと白髪を震わせると、立岩近くの砂を手早く集めた。
最初のコメントを投稿しよう!