失恋した相手が結婚したその日、僕の人生は大きく変化する

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爽やかな優男タイプのあいつとは全く違うタイプ。 写真の相手から漂うのは大人の色香。あまり普段は使わないけど、『セクシー』という言葉が一番しっくりくる。 そんな人が僕にメッセージをくれるなんて・・・。 僕のプロフィールは至って普通で、特に目を引くところはない。見た目も普通で体格も普通。写真も鏡越しにスマホで目元を隠した写真だし、特に可愛くも色っぽくもない。本当に普通だ。 でも相手の人は僕にメッセージをくれて、何度かやり取りをして、そして向こうから会うことを打診されたのだ。 会いたいという相手の言葉に一瞬迷ったものの、そもそも僕はそのためにこのサイトに登録したのだから、断る理由は無いと思った。 僕は変わるんだ。 臆病な自分を捨てて、大人になるんだ。 そのために、この身体を抱いてもらう。 僕はそのためにこのサイトに登録したんだ。 今まで誰とも付き合ったことも無く、もちろん肌を合わすどころか手すら繋いだことがない僕は、ここで大人の経験をして強くなることにした。 いつまでも叶わなかった恋なんて引きずらず、そんなことがどうでも良くなるくらい強烈な体験をして、過ぎた恋なんて忘れるんだ。 だから・・・。 僕は会うことを承諾して、食事をしようという申し出をホテルへ行くことに変えてもらった。それだけできっと、相手は僕が何を望んでいるか分かったはずだ。 経験豊富そうな人だし・・・。 やり取りをするうちに、相手がとてもこの手のやりとりに慣れていることが分かった。でもこの手のサイトは初めてだと言うので聞いてみると、今まで付き合ってきたのは女性ばかりだったけれど、男性とも付き合ってみたいと思ったのだと言う。 今まで気にはなっていたが男性と付き合う機会がなく、女性としか付き合ったことがなかったその人は、先日恋人と別れたのを機にこのサイトに登録したのだそうだ。そして目に入ったのが僕なのだと。いかにも慣れてなさそうなプロフィールと無防備そうな写真の僕に、何だか心配になったそうで、だから思わずメッセージを送ってしまったのだと。 確かにそんなことでもなければ、こんな僕にこんなモテそうな人がメッセージをくれる訳がない。だけど、僕が求めてるのは心配ではなく、一夜のベッドのお相手だ。だからそれを正直に話して、お断りをしようと思ったのに、相手はそれでも構わないと言ってきた。 心配だから僕にメッセージをくれたのに? だけど相手は僕の希望を叶えてくれると言うので、今日会うことになったんだけど・・・。 よくよく考えたらやっぱりおかしいよね? だってきっと今までいっぱいキレイな女性(ひと)と付き合ってきただろうその人が、いくら初めての男性だと言っても、こんな普通の僕でいいなんて考えられない。あのサイトの他の人の写真を見たけど、結構かっこいい人やキレイな人がたくさんいたのに。 なんで僕? いくら心配だって言っても食事ならまだしも、僕はちゃんとホテル希望だって言ったし、それを相手も承諾したけど・・・。 初めて抱く相手だよ? それは特別なことじゃないの? こんな僕で本当にいいの? そう思い始めたら、どんどん止まらなくなってしまった。 もしかしたら騙そうとしてるのかも? 身体・・・は僕の希望だけど、もしかしたら他の人にはできない特殊プレイをしようとしてるのかもしれない。それか、僕の恥ずかしい写真か動画を撮って僕を脅して身体でお金を稼がせようとしてたり・・・。いや、単純にお金を取る気なのかも。恋人もいない地味な会社員はお金を使わないから貯め込んでると思って、結婚詐欺みたいに僕に貢がせてお金が無くなったら捨てられちゃうのかも。 そんなことを思っていたら、何だか会うのが怖くなってきて帰ろうとしたその時、突然持っていたスマホの通知音が鳴った。
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